踊る音を聴く。「MURATA黄昏」レビュー レビュー

踊る音を聴く。「MURATA黄昏」レビュー

2022年最後に観た舞台は、ちょっと、いやかなり変わっていた。 会場は渋谷の裏通りの倉庫を改装した小屋。 そこにあるセットは、手作りの学芸会のような犬小屋とりんごの木や草むらで(どれもチープ感満載) 真ん中のボードの上には、白いタップシューズ。 タップダンサー村田正樹さんのソロ公演「MURATA黄昏…
私の沖縄ノートのきれはしvol.4 [2014年 おばーのみそ汁] エッセイ

私の沖縄ノートのきれはしvol.4 [2014年 おばーのみそ汁]

 沖縄の言葉に「あじくーたー」という表現がある。ただ単に味が濃いという意味ではない。「しょっぱい」でもなく、「こってり」とも違う。沖縄育ちではない私はその言葉を正確に説明することはできないが、私の思い出の中にもひとつだけ、「あじくーたー」としか表現し得ない料理がある。それが、沖縄の祖母が作ったみそ汁…
私の沖縄ノートのきれはしvol.3 [2022年 おばと沖縄復帰] エッセイ

私の沖縄ノートのきれはしvol.3 [2022年 おばと沖縄復帰]

この話は、2021年秋に沖縄に行ったときにおばと会ったあと書いたものです。その後、沖縄タイムス社の「沖縄の生活史」聞き取りプロジェクトに応募し、このときのおばの話をさらに聞きました。(沖縄タイムスにて公開)この記事は、その前の個人的な記録として残しておきたいなあと思っています。 「本土復帰は、世界が…
一つ歳を重ねて エッセイ

一つ歳を重ねて

無事に一つ歳を重ねました。 誕生日が3月だからか、いつも個人的な新年は春分の日あたりなのですが、今年は特に、今月頭からの蕁麻疹に悩まされ、ようやくすっきりしてきたので、なおのこと「新しい年」という感じです。 新しい、といえば、来週は新しい取り組みで沖縄〜京都へ。 沖縄は、沖縄タイムス社の「沖縄の生活…
追いかけたいもの:清水きよしパントマイム「幻の蝶」 レビュー

追いかけたいもの:清水きよしパントマイム「幻の蝶」

舞台の仕事をしている私でも、観劇は日常ではなく、特別な出来事になった。 今年初観劇は、パントマイミスト清水きよしさんのマイム活動55周年記念公演「幻の蝶 Vol.152」。2月5日(土)観世能楽堂。能楽堂でソロでパントマイムを上演する、清水さんのライフワークのような作品だ。 休憩を挟んで8本のオムニ…
私の沖縄ノートのきれはしvol.2 [1980年 父と昭和] エッセイ

私の沖縄ノートのきれはしvol.2 [1980年 父と昭和]

1980年 父と昭和 「お父さんはパスポートを持って日本にきたんだぞ。沖縄はお前が生まれるちょっと前まで、アメリカだったんだぞ。お金はドルだったし、車も右側通行だったんだぞ」 父は、生粋のウチナーンチュである。沖縄本島で戦争中に生まれ、母(私の祖母)に女手一つで育てられ、高校卒業後、集団就職で195…
私の沖縄ノートのきれはしvol.1 [2021年 首里城の御庭の前] エッセイ

私の沖縄ノートのきれはしvol.1 [2021年 首里城の御庭の前]

2021年 首里城の御庭の前 2021年10月、7年ぶりに訪ねた沖縄は、静かだった。那覇の国際通りは、緊急事態宣言が解除されてもまだ休業している飲食店も多く、以前なら数十メートルおきに声をかけてくる客引きや陽気なタクシーの運ちゃんにも(「ワンメーターでも乗っていきなよ」にいつも笑ってしまう)、道端で…
「海をあげる」から渡されたバトン ブックレビュー

「海をあげる」から渡されたバトン

筑摩書房「海をあげる」上間陽子  なんとも優しいタイトルだ。青が基調の装丁、ページをめくるとおだやかな目次がならぶ。ゆとりのある文字組みで、幼い娘さんの微笑ましいエピソードから始まる。そのソフトさからは、ほっこりとおだやかな日常エッセイが始まるように思われるが、私はわずか20ページで涙が止まらなくな…
9月1日のひとりごと エッセイ

9月1日のひとりごと

9月か・・・ため息(笑) SNSにアクセスしても、言葉を失ってしまって、そっと閉じる、の繰り返しでした。夏が終わるから、なんとなく近況です。 緊急事態宣言下での今年の夏は、いろいろ引き裂かれる気持ちの多い月でした。喜多方のフェスになんとか出演できて、岐阜や豊田の公演が、主催者の大いなる努力で実現でき…
今を生きる人たちがうたう、「大友良英Presents 武満徹の”うた”」 レビュー

今を生きる人たちがうたう、「大友良英Presents 武満徹の”うた”」

Eテレのクラシック音楽館「大友良英Presents武満徹の”うた”」をオンデマンドで観た。最近亡くなった立花隆さんの「武満徹・音楽創造の旅」を夢中で読んでいる途中で、にわかタケミツマニアなので、個人的になんともタイムリー。 そして、武満さんのうたを現代の歌い手と演奏家でディレクションするのが大友良英…