500字書評:人新世の『資本論』

「資本主義はもう終わる」と半ば直感的に感じたのは2017年頃。
小さくて有機的なコミュニティが同時多発的に増える一方、拝金主義も跋扈して、その断絶に愕然としていた頃だ。

私より10年若い斎藤幸平さんのこの本は、緻密なマルクス研究の上に立ち、真っ直ぐに資本主義を「終了宣言」させている。見事な説得力。

特に今もてはやされてるエコやSDGsにまで向けられた厳しい視点は、「これもただのニューモデルのビジネスじゃないか」と疑っていた部分を明確に説明してくれた。そう。あれもやはり、資本主義に絡め取られた雰囲気重視の新しい消費の形でしかない。

資本主義でも従来の共産主義でもない新しい世紀へのヒントで、「コモン」の概念が指摘されたことも嬉しかった。地道に場を作る人たちや、古くからの土地を守る人たちはすでに静かに実践しているし、もう、金持ちになりたいという欲すら薄れている若い世代こそ、その概念を具体化できるような気がする。

できれば、「○○主義」に変わる言葉を私たちが生み出せるといいのだけれど。

コロナの後の荒野に立ち、新しい生き方を始める人たちのバイブルになるような、厳しくも遠くを見据えた本だ。