アルバム

都の子 (集英社文庫)
江國 香織 / / 集英社

エッセイというジャンルが好きなのは、こんなに世界は美しいのかと知る事が出来るからだと思う。
誰かの目で捉えた世界。
自分の目が見落としたものを、他の人は鮮やかに捉えて、意味と価値を見いだしていたりする。
その視点にはっとさせられる。

という意味では、ブログもそうなのかもしれないけれど、ブログは「こう見ている私を見て」にどうしてもなってしまうのだよなあ。もしくは、語れない日常の感情のはけ口。
いつでも実際の自分よりちょっと上から、世界を知ってるかのように分析してる。
それは、誰が、ということではなくて、自分がそういうものを過去書いていたから、そう思うのだ。
今は、自分の日常や、そこにまつわる感情そのまんまを綴る気はなく、ただ、読んだもの、見たもの、作った食べ物、育てた植物、関わった仕事を積み重ねただけのものから、自分の輪郭が浮かび上がればいいなあと思っている。
だから、これはほとんど未来の私に向けたアルバムだ。

ところで、自分の過去のアルバムを見てしまったような気恥ずかしい気持ちにさせられたのがこの本。
それは、昔私はこの人の書くエッセイが本当に好きで、憧れて、まるでコピーのような文章を書いていたから。
10年ぶりくらいに読み返して驚いたのは、これをまねしていたのが、当時は気づかなかったこと。まるで自分のオリジナル発想だと思って書いていたのが、この本にまんま載ってたりして、気づかずにまねしてた自分に愕然・・・

それほど影響力を与えた本なのに、書いてあることは、この人の日常や景色や物事を、ただただ淡々と描いているだけ。何の説教も、メッセージもなく、ただ世界を映しているだけ。
そこにはドラマもなく、自己主張もなく、あっけないくらいさらりとしている。
たいした栄養分のない、きゅうりやなす、みたいな本なのだ。
でも、私は、相変わらずきゅうりやなすが、とてもとても好きなのだよなあ。

今は、まねを脱却して、ちょっと違う場所にいるのだな、ということも確認できたし、過去の自分に立ち返って恥じ入ると同時に、かわらない自分の本質的な好みも改めてわかったし、なんだか、安心した。

また、何年か後に手に取ろう。


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