悩んだ先に

悩む力 (集英社新書 444C)
姜尚中 / / 集英社

普段あまり見ないテレビを見ていたら、素敵な人が映っていた。
私の好み、けっこう特殊なので、共感していただけないのは承知の上ですが、
テレビに出てるのに品がよくて、おだやかな物腰で、何より、声がすばらしい!!
と、めずらしく思ったのが、姜尚中さん。
本はたくさん出されているけど、名前と顔が一致していなかった。

そこで、早速本屋でベストセラーを購入。
その固い文章も、好み。

タイトルの「悩む力」なんて、『なんとか力』の流行っている昨今興味はないし、その手の本は当たり前の事を手を替え品を替えて言っているだけで、全然新鮮味はない!軽すぎる!と、嫌悪する類いなのだけれど、これは読み応えありました。

読んでて哲学者なのかと思ったら、政治学者でびっくりだったけれど。
要点はシンプルに「軽く上滑りするように悩むことを避けて生きるより、悩みぬいてそこをつきぬけて、わがままになれ」というようなこと。
悩み抜けとは、それだけ言われたら「きれいごというなよ!」となるのだけれど、
その後にわがままになっていい!っていうのがいいなあ。
そして自分の在日としてのアイデンティティの悩みと、マックス・ウェーバーや夏目漱石が悩んだ事とを重ね合わせ、それを現代に浮かび上がらせているという点でも、説得力がある。
あと、スピリチュアルも恋愛至上主義も、働くということも、全て彼の視点で分析しているのが、「意味を見失うと人は絶望する」ということ。うん、納得。

そして、最後の章あたりで、悩んできたこの人が今後やってみたいことを華々しく宣言するあたりに、胸がすくような思いがした。
だって、とても政治学者の願いとは思えないもの。
悩みぬくということは、時にうっちゃりのような、大形勢逆転劇も起こすのだなあと。

私ももう数年来答えの出ない悩みを抱えているけれど、それも、いくとこまでいったら、「おりゃっ」と思いもよらない展開があるのかなあ。
そしてその後超わがままに生きるのかなあ。
それも、わるくないな。


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。