コンセプト

坂本龍一プロデュース公演 ロハスクラシック2008 @赤坂ACTシアターを観に行く。坂本龍一掲げる「自分の言葉をしゃべる」というコンセプトがとてもいいと思ったので・・・・

前半は、このコンサートの為のオーディション通過者三チームの演奏。
そして休憩後の後半はゲスト演奏。
それぞれ全て坂本さんが紹介し、話を引き出すなどしてナビゲートする。

一部は、
まず13歳のバイオリンの女の子。
どうも弦楽器は私苦手な傾向にあり、特にバイオリンは「プライドで弾いてる」みたいな粘っこさを感じる事があって、楽器そのものの良さを感じさせてくれる人は少ないのですが、彼女の音は素直。
ただ、中学生の吹奏楽のように、楽曲の理解のないままの(いや、理解はあるけれど実感のないままの)演奏という感じはした。
年齢の問題ではなく、何かをつかめばいいだけのことだと思いますが。
トークのときには震える程緊張していても、演奏には没頭できているのが、よかった。

クラリネットとピアノのユニット
今の20歳くらいの人たちに共通している、繊細でセンスがいいのにすごく弱々しい印象(音がではなく、生命力が)。

雅楽のユニット
伝統的な雅楽と、それをアレンジした現代ぽさのバランスはよかった。一部の出演者の中では、一番パフォーマンスとしても成立していたし、若者らしさもあった。
でも、なぜか売れ線意識という雰囲気は否めないなあ。

2部。
シンガーソングライター小山絵里奈さんとコトリンゴさん。二人の声や音楽の印象がすごく似ていて、それぞれは良かったのに、なぜこのコンサートでそんなふうにブッキングしたのだろうという感じ。
聴いている時には、それぞれの個性を見ようとしていたのに、終わったら違いが分からなくなってて・・・残念。
くすぐられるけれど、のめり込んでしまうようなエネルギーではなかったなあ

ピアニスト小菅優さん。
日本人ばなれしたピアノ演奏ではあるのだけれど、どうしてクラシックのピアニストはほとんどが、ピアノにしかエネルギーが向かっていないのでしょう。
基本的においてけぼりにされること多数。
今回も坂本さんとの即興演奏の時に初めて間口が広がったというか、お客さんに向かう空気を感じたけれど、それ以外は、「やっぱりクラシックってわからない」って思わせる変な圧力を感じる・・・

ラスト坂本龍一
ピアノソロのワンフレーズが一番胸に迫った。多分御本人もおっしゃる通り、ピアノは上手い方ではないのでしょうが、他の人との圧倒的な音の密度の差、メッセージ力はすごい。
音楽を使ってのコミュニケーション能力というものがあるとすれば、ようやく、「このひとのしゃべってる声は聞こえるし、ちゃんと言ってることがわかる」という感じだった。
が、基本的に「スタンダード坂本龍一集」という感じ。冒険がなかったのは残念。
しゃべってる内容が(もちろん音楽で)自己紹介のような、通りいっぺんの印象があった。

全体の結果からいうと、コンセプトがみんなの中に浸透しておらず、舞台の上で同じビジョンを描けていなかったのがすごく伝わってしまって残念だった。
オーディション通過者含め、クラシック畑の人たちが、コンクールを中心とした「勝ちに行く」音楽にがんじがらめにされているのも気になったし、逆に「自分のことばを持ってる」シンガーソングライター達の視点がそれほどはっとさせられないのも気になった。
つまり、ロハスクラシックと銘打っていても、みんなしゃべっていることは自分のこと。自分と自分につながる自然や宇宙とつながる言語としての音楽を期待していたわたしとしては、主旨不在、というふうに見えたのでした。

ただ「自分の言葉をしゃべる」というこのコンセプトはすごくよかった。
すごくむずかしいけれどやりがいのあるテーマ、だと思うし、その言葉で何をしゃべるかが、やっぱり大事なのだと思う。


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