救いってなんだろう

富士山 (文春文庫)
田口 ランディ / / 文藝春秋

前回読んだ「空中庭園」と一緒に古本屋で買い、そのまま続けて読んだ。
田口ランディさんの本は、冷静に読むとハチャメチャだと思う。
つじつまがあっていない時すらある。
グロテスクで、スピリチュアルすぎるし、現実と混同するかのような描き方をする。

それでもなお。
なぜかこの人の作品には、救いがあるのだ。
救いってなんだろう。
私は作品をみて何をもって救いだと思うのだろう。

この作品も、富士山をテーマにした短編小説集だが、甘いものはひとつもない。
読んでて気分わるくなるような感じ。普通に考えて、絶対に私の嫌いなジャンル。
なんだけれど、読み終わった時に、私の存在も受け入れてもらったような気がするのだ。
角田さんのは、逆だった。読み終わって私はこの作品の中の、いちばんいじわるな役かも、と思って凹んだ。

人を愛そうとしているかどうかじゃなくて、世界を愛しているかどうか、かもしれないなあ。

あるがままの荒々しいこの世界を、恐がりながらも愛している。
空から下を見ているのではなく、地平から、上を見上げている。
田口ランディさんの作品は、そんな感じがします。
そのなかの人間のちっぽけさに、救いがあるのかもしれないな。


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