魂のふるさとへ1

桜が東京で咲き始めてすぐの6日間、沖縄に行っていた。
父の故郷ではあるが、私にとっては、実はあまり知らない土地。
でも昨年行ったとき、記憶がじゃなくて、魂が、「やったー帰って来た!!」とほんとに叫んだ気がした。
何を見ても気持ちよくて深呼吸できて、まっさらな私に戻って行く感じ。

今年は、昨年行った久高島へもう一度行って、どうしても一年間のお礼が言いたかった。
父が亡くなってからの一年は、私には申し訳ないくらい何者かに守られたような一年だったから。
その理由の一つは、久高島にあるような気がして。

しかーし、春の長い不調の中、勢いで航空券は取ったものの、去年のようにはちっともワクワクしない。プランも何も浮かばない。準備も全然していない中向かう事になってしまった。
うーん、私が再びそんな聖域に行っていいのだろうか。
そんな後ろめたさと、
沖縄ってめっちゃパワー使うんだよなあ。
というだるさを抱えたまま、人に会う予定もなく泊まる場所も決まってない日もあって、
どうしよっかなあ。と思いつつ。

那覇に着いた時、それでもやっぱり無条件に感じたのは、深呼吸感。
なんでこんなに息が吸えるのだろう。この感覚は、どうしても他では味わえない。
いわゆる旅の開放感とは全然違う。
しかし、牧志の公設市場でごはんを食べて、国際通りにあるホテルに着いたときには、雨。
そして、妙な寒気とだるさ。強烈な眠気。
「寝るか・・・」
沖縄でいきなり数時間寝る私。
その後通りを歩いてみても、なんだかいまいちぱっとしない。
選択に常に迷いがあるのだ。
旅のはじまりって、本当におっくうだ。こう、スイッチが入るまで空回りをする感じ。
一日目は、結局熱っぽくて、夜、ユニットバスに湯を張って浸かって早々に寝る始末。

二日目、バスで南部へ。久高島を臨む知念にホテルを取り、荷物だけ預ける。
雨が降ったりやんだり。ありゃ、近場しか回れないか、と思いつつ近くの斎場御嶽へ。
ここは、去年もお参りした、無条件に気持ちの良い所。
再びお参りをしたとたん、雨が上がり始める。それと同時に、ふわーっと、自分が自由になった。
今思えば、ここから、ようやく旅モードが始まったのかも。

せっかく晴れたなら、と違うバスに乗って、さらに南部へ。
グスク跡や遺跡の点在する玉城の方へ行くためにバスを乗り換えようと、終点で運転手さんに
「乗り換えるバスはどこから来ますか?」と訪ねると、
「歩いてもすぐだけど、つれてってあげるさー」
と、終点からさらにバスで5分、路線外を走る。それは歩いてもすぐ、じゃないのでは?

「ここでおりればすぐバス停。海に向かって歩けば海岸よ」
と強面だけれど優しい運転手さんに言われ、降りた先に見えるバス停は何もなく(なんで?)
じゃあ、と海に向かって歩いてみる。
想像以上に歩いてようやく海岸に着き、地図を広げて、行ってみたい遺跡の数々を眺めてみる。
うん、近そうだ。
しかし・・・地図の読めない私、どれだけそれらしい方向に歩いても、全くたどり着かない。
最初の場所からどんどん離れ、もはやどこを歩いているか全く分からない。
仕方なく、別の海辺へ出て、砂浜をずーっと歩いてみる。もうすでに目的地なし。

そこへ突然、海の中に立っている碑を発見。
何かの聖地だ。わからないままお参りをし、その近くの日陰の岩場に入っていくと、
一瞬で分かる、密やかな空気。
岩場に小さな道も出来ている。
そこを静かに進むと、うたきがあった。

沖縄の聖地は、門もなければ建物もない、自然の岩が3つばかり積んであるだけの所がほとんど。
全く目だたないそこへたどりついた事に深く感謝しながらお祈りをすると、
脇から、自転車ですーっとそこへ入ってくる観光客!
なに?と見れば、道路から散策路として整備された道がそこへ続いているじゃないの。
なんで私は海辺から細い道たどって来たの?
ちゃんと表には看板も立ってるし。目立ってるじゃん。
何十回も道と地図を見比べてたのに私・・・

その後、景観のすばらしいカフェに立ち寄り、丁寧なカレーを食べながら、ひたすらぼーっとする。なんと近所は宮本亜門邸。おお!といきなりミーハーな私。

帰り、イレギュラーな場所でバスをおろしてもらった私は、当然、帰る道が全く分からない。
バス停はあちこち点在しているけれど、沖縄のバス路線は超複雑!!いくつもの会社のいくつもの系統が複雑に絡み合って、各目的地へ向かっている。
しかたがないので、見つけたバス停にやって来たバスを止め、運転手に
「知念に行きますか?」と聞く。
「行かないよー。次のバス待っててー青いバスよー」
とのんきに走り去るバスであったが、バス停の表示を見る限り、そこには一つの系統のバスしかこないはず。
いちかばちかで歩いて、別のバス停へ。
はたして、ほどなくして着いた次のバス停では、いくつかの路線が止まる表示。
そして、すぐやって来た知念行きのバスは、青じゃなく、緑色であった・・・
(青は全く違う方へ行った)
運転手さん、それでも、ありがとう。

2日目に学んだ事。
沖縄の人の道案内は、あまりあてにならない。
そして私は、私の地図を読む力は、もっとあてにならない。
少しは読めてるかと思ったが本当にちっとも読めていない。
でも地図ではなく、必要な所にたどりつく能力を、ちゃんと信じなくてはいけない。

行きたい所には、地図じゃない力で、結局行けた。
ホテルに着いてから、私が見てきた場所を改めて地図で確認してそう思った。
なんで着いたのか謎なくらい、へんなとこ歩いてた。ははは。

つづく


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