絵のにおい

昨日、ある所で美術館の話題がでたので、無性にいきたくなった。

好きな場所って、どこでもそうなのだけれど、独特の匂いがある。
(矢沢永吉さんは、以前テレビで「ライブハウス独特の匂いがある」って言ってたな)

美術館の、あの生の絵からしか立ち昇らない匂い、あれはなんだろうな。
古い絵の具の匂いなのか、何かメンテナンスに使っているような薬剤の匂い?なんか違う。
とにかく「生絵」の匂いなんだ。

その匂いをかぎながら、敢えて焦点をあまり合わせないようにして私は美術館の中を歩く。
で、ぱっと目が合った絵にまっしぐら。
進んでは戻って、止まって、また戻って。
焦点を合わせて、またぼかして。
好きな絵を見つけたらゆっくりだけど、だいたいものすごく早く見終わっちゃう。

…そういうことしないでください!って美術館の人に怒られそう。
混んでる時にはやりません。

ああ、行きたい。

ピカソやクレーのように
「こうするしかなかったんだね」と思える表現を見たい。
そのやむにやまれぬかんじが、私はすごく好きなんだよな。
彼らが始めからあの表現方法をとったのではないことは、
時代を追ったり習作を追ったりするとよくわかる。
奇をてらったのでもなく、個性を主張したのでもなく
描いて描いてその先に「こう描くしかない」と至った切実なかたち。

それを、浴びるように見たい。
そして、私も「こうするしかない」という部分に行き着きたい。

音楽だろうが絵だろうがスポーツだろうが身体メソッドだろうが、
行き着いた先は全てひとつだ。

はっ。じゃあ、あの匂いは、行き着いた「場所」の匂いなのかな。
あの匂いの先に、全部つまってるのかな。


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