レビュー

踊る音を聴く。「MURATA黄昏」レビュー レビュー

踊る音を聴く。「MURATA黄昏」レビュー

2022年最後に観た舞台は、ちょっと、いやかなり変わっていた。 会場は渋谷の裏通りの倉庫を改装した小屋。 そこにあるセットは、手作りの学芸会のような犬小屋とりんごの木や草むらで(どれもチープ感満載) 真ん中のボードの上には、白いタップシューズ。 タップダンサー村田正樹さんのソロ公演「MURATA黄昏…
追いかけたいもの:清水きよしパントマイム「幻の蝶」 レビュー

追いかけたいもの:清水きよしパントマイム「幻の蝶」

舞台の仕事をしている私でも、観劇は日常ではなく、特別な出来事になった。 今年初観劇は、パントマイミスト清水きよしさんのマイム活動55周年記念公演「幻の蝶 Vol.152」。2月5日(土)観世能楽堂。能楽堂でソロでパントマイムを上演する、清水さんのライフワークのような作品だ。 休憩を挟んで8本のオムニ…
「海をあげる」から渡されたバトン ブックレビュー

「海をあげる」から渡されたバトン

筑摩書房「海をあげる」上間陽子  なんとも優しいタイトルだ。青が基調の装丁、ページをめくるとおだやかな目次がならぶ。ゆとりのある文字組みで、幼い娘さんの微笑ましいエピソードから始まる。そのソフトさからは、ほっこりとおだやかな日常エッセイが始まるように思われるが、私はわずか20ページで涙が止まらなくな…
今を生きる人たちがうたう、「大友良英Presents 武満徹の”うた”」 レビュー

今を生きる人たちがうたう、「大友良英Presents 武満徹の”うた”」

Eテレのクラシック音楽館「大友良英Presents武満徹の”うた”」をオンデマンドで観た。最近亡くなった立花隆さんの「武満徹・音楽創造の旅」を夢中で読んでいる途中で、にわかタケミツマニアなので、個人的になんともタイムリー。 そして、武満さんのうたを現代の歌い手と演奏家でディレクションするのが大友良英…
言葉の沼に沈む。友部正人ライブ 舞台レビュー

言葉の沼に沈む。友部正人ライブ

友部正人さんのライブに行った。 私が尊敬している人が尊敬している、というので、名前だけは存じていたものの、曲をほとんど知らずにいったのだが、言葉の沼にすぷすぷと沈められて帰ってきた。 聴き始めは、なんか普通のフォークだなあと思ったのだ。だけど、だまされた。その世界は3畳間にとどまらず、というか3畳間…
500字書評:人新世の『資本論』 エッセイ

500字書評:人新世の『資本論』

「資本主義はもう終わる」と半ば直感的に感じたのは2017年頃。 小さくて有機的なコミュニティが同時多発的に増える一方、拝金主義も跋扈して、その断絶に愕然としていた頃だ。 私より10年若い斎藤幸平さんのこの本は、緻密なマルクス研究の上に立ち、真っ直ぐに資本主義を「終了宣言」させている。見事な説得力。 …
1000字劇評:オペラシアターこんにゃく座「森は生きている」 レビュー

1000字劇評:オペラシアターこんにゃく座「森は生きている」

舞台を見終わって劇場から外に出たら、風景が違って見える。そんな舞台はいい舞台だ。 オペラシアターこんにゃく座創立50周年記念「森は生きている」新演出・オーケストラ版を観た。この作品は、演出を変えて上演され続けているこんにゃく座の定番中の定番。私も3回くらい観ている。それを50周年を記念して新しい演出…
テレビドラマ500字評「にじいろカルテ」 レビュー

テレビドラマ500字評「にじいろカルテ」

救急医療で活躍していた内科医真空(高畑充希)は、自身の難病により退職を余儀なくされ、自信を失った毎日。そんな時に過疎の村の内科医の募集を見つけ、病を隠して応募し、採用される。 熱烈な歓迎をする村民たちは変わった面々で、同僚の外科医師も看護師も一癖ありそう。着任早々の村民の事故の処置の後、真実を告白す…
500字映画評「マイ・インターン」 レビュー

500字映画評「マイ・インターン」

若手女性社長ジュールスの元にシニアインターンとして入ったベン。初めは全くあてにされず、仕事もろくにもらえなかったが、彼の長年の経験からくる機転や、あたたかな人柄に周りの人が惹かれはじめ、次第にジュールスも信頼を寄せるようになる。 特別な趣向を凝らした作品ではないが、終始見ていて気持ちのよいのは、恋愛…
500字書評「仕事の話」 ブックレビュー

500字書評「仕事の話」

普段、本は電車の中で読む。ひとやすみのカフェで読むこともある。東京に行って帰ってくるあいだに一冊読み終えるのがいつものペース。 だが、都内に出ることも電車に乗ることも控える今、私はこの本を家で読んだ。布団の中やお風呂の中で。部屋の中で陽が落ちて薄暗くなるのにも気付かずに読んだ。何日もかけて、ゆっくり…