チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光
海堂 尊 / / 宝島社
ISBN : 4796650792

ミステリーに興味はなかったので、知らない作家を読むキャンペーン中でもなければ手に取ることはなかったと思う。
ミステリーは、大人のものだ。リアルで動かしようのない現実の生活に足をつけているからこそ、非現実を楽しむことができる。

大人になった今は、それがちょっと分かるような気がした。
物語の中で明らかなゴール(事件の真実)をつかまなければならないから、現実を忘れて夢中になれる。
その時間は、大人だからこその贅沢だと思う。
こどもは空想する生き物だから、それが必要がない。少なくとも今までの私は。

で、本作品。
一般人の現実からは遠い、専門分野がリアルに書かれていればいる程、非現実の楽しさがある。そういう意味で、医者の書く医療ミステリーは引き込まれる。

でも、どんでん返しにしたいという意図が見えるので、あまりどんでん返しに感じられないのだなあ。
リアルな現場にいるからこそ、リアルでなければならないと思い込んでいるからこそ書いているものが嘘っぽいというか。
リアルじゃなきゃ、非現実を楽しめない。のに、リアルに囚われるとそこから遠くなる。兼合いは難しい。
そしてやはり気になる映像の匂い。
キャラクターの作り方といい、物語の進みといい、ドラマになる事を想定して作っている脚本のようなニュアンス。
面白かった!と思ったあとにすぐ冷めちゃうんだよな、映像っぽい本は。

やっぱりもう少し本らしい本が読みたい。


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