生きている舞台。生きているピアノ。

オペラシアターこんにゃく座の「森は生きている」を観ました。

小学生の頃、劇団仲間の同じく「森は生きている」を母に学校を早退させられて観に行った懐かしの作品。(内容よりその事が印象強いのも何なんですが笑)
こんにゃく座のもその後観ていて、他にも大好きな保育園で歌っているのを観たりもしているのですが、なんとなく林光さんの曲がとっつきにくいなあと思ってました、正直。

今回開演にちょっと間に合わないという痛恨の極みで、途中から入ったので、
同じく曲のとっつきにくさにしばらく振り回されたのですが、
いつしか自然と、物語に入っていました。

舞台の絢爛豪華さは全然ないけれど、しみじみと美しい背景、
キラキラ度ゼロの衣装(女王様とかでてくるのに笑)
録音の効果音が一切ないこと(多分…)かといって妙に生演奏で擬音をあらわさないこと、
特別にキャラの立つ人はいないけれど、誰が歌っても、言葉が全て聴こえてくる歌など、
とても誠実な創りの舞台。

その中でも、ダブルヒロインといってもいい、わがまま女王様のキュートなこと。
もっといやーな役のイメージがあったけれど、
子どもだって彼女に共感しちゃうようなリアリティのあるわがままさで、
(そしてそれは周りの大人の責任であることもしっかり伝わる設定で)
物語を動かす中心人物になってました。

そして、音楽!
いや、とっつきにくいのはにくいけど、それを覆すようなピアニスト室坂京子さんの攻めるピアノ。
時に歌の迫力を超え、時に遊んで、一台のピアノで伴奏じゃなくて進行をしてる。
しかもクラシックの中になぜかグルーブ感じる!

声楽や器楽や合唱の伴奏ピアノって往々にして必要以上に控えめなことが多く、
楽曲的に、メインと絡み合ったり、ピアノがメインになったりする場面にもかかわらずいつまでも三歩下がっていたりすると灰皿投げたくなるんですが(笑)

今回はちがった!
挑むピアノ。
そしてその中でも絶対に言葉がちゃんと聴こえる歌。
その際どいバランスは、ちゃんと理性的なところで成立しているように思え、
生ピアノをただの伴奏にしない、こんにゃく座がそれをよしとしていることが嬉しかったです。

座の古典とも言える作品だろうけれど、生きた舞台であろうとする姿勢が、いろんな場面で伝わりました。
芝居はもうちょい自然でもいいんじゃない…と思う所もあり、12の月の精がもうちょいそれぞれ個性豊かであってほしいとも思うけれど、
「今を生きるんだ!」ってエネルギーが伝わってきました。

小さな子達もたくさん観に来ていて、
しっかり内容観て、見事にいいタイミングで笑うんだな。
あの声もまた舞台を支えている事に彼らは気付いていないだろうけれど、
観る側にもやる側にも、宝物のような声だったと思う。
子どもと舞台を一緒に観られる事の素敵さを、お客として出かけた先で味わえたのも幸せな事でした。