ちょっと綺麗すぎる世界 「KUUKI」

インクルーシブアーツフェスティバル、ベイビーシアタープロジェクトで作られた作品「KUUKI」を見ました。
日本人の女性3人の出演者で、一人はアコーディオン奏者、お二人は俳優?ダンサー?でしょうか。
ポーランドの演出家を招いて作られたそうです。

入ると穏やかなアコーディオンの音。
二人の出演者がゆったりと揺れています。
全員が着席したところで、ゆっくりと布を広げて揺らしたり音を出したりしながら、踊りが繰り広げられていきます。
風船とともに踊ったりするパフォーマンスのあとで、後ろのカーテンをゆっくりあけると、奥にはいくつかの風船と、いくつかの箱。
箱の中には音の出るシェイカーのようなおもちゃがいくつもあって、それを取り出すあたりから、子どもたちは前に出て自由に中で遊ぶことができます。

観るシーンの中でも、特に音に大切にしたシーン、動きを重視したシーン、視点が上へ行ったりしたへ行ったり奥へ行ったりと絶妙に促す振り付け、そしてだんだんと子どもたちが動けるように導くシーンと、丁寧にシーンが移り変わりながら、「みる」から「あそぶ」へ、子どもの生理的な反応を大事に先へと進めていく演出が感じられました。
子どもに対する深い愛情と洞察があるなと感じます。

ただ、まさにKUUKIなのかもしれないけれど、個性を出さずに与えられた演出を真面目にやっているように見えて・・・彼女らはどういう存在なのか、言葉を喋らないのはなぜなのか、子どもとコミュニケーションをとるのかとらないのか、踊っているのか意味のある動きなのか、強くはないのだけれどぼんやりとした「はてな」が私の中には浮かんでいました。

気になったのは、心地いいということは外せない絶対条件だと思うけれど、なんであんなに全てが女性的なんだろうということ。
世界は多様で、男も女もどっちともいえない性もあって、そんな中で、赤ちゃんに接する演者はなぜ「あんなに思いっきり母性強調の衣装の同じような女性だけ」なんだろう。

衣装がもうちょっと中性的だったり、性別や年齢の組み合わせがもうちょっと違う3人だったら、この同じ動きや同じ流れはどう映ったんだろう。
ちょっと綺麗すぎる世界を見せられて、これがあかちゃんにとっての正解、といわれてしまったようで、なんだかちょっと居心地が悪くなってしまった意地の悪い私。舞台の過程がとても丁寧だったが故に、そんなことを思いました。


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