生きづらい女性の居場所探しの物語「この世界の片隅に」
「この世界の片隅に」を観る。
じわじわと長い間続いている口コミは、きっと何かわけがある。と思って見に行って、やっぱりじわじわと、静かな思いが押し寄せた。
とにかく、アニメは絵なんだな。ということを感じさせる作品。
高畑勲監督の「かぐや姫の物語」にも感じたけれど、(さすがにかぐや姫には及ばないけど)
人の描く絵には、エネルギーがある。
愛情もそこに乗っかる。
そういうことを信じて、丁寧に作られたのだということがよくわかる。
絵が持つリアルも、絵だからできるファンタジーも、
両方描いていると思う。
このシーンは、丁寧に描くのは辛かっただろうな。と思うシーンも。
この映画、戦争の映画、原爆の映画というのと同時に、
女性の、居場所とアイデンティティの映画でもあると思う。
戦時中じゃなくても、これが平和な世でも、
すずは、日本中にたくさんいる。
これが過去の特別な時代の話だったら、ここまで共感は呼ばない気がします。
すずが居場所を見つけにくいという根本的な日本の社会のあり方は(戦争の有無に関係なく)現代の女性のしんどさにもずっと繋がっている気がして、
一応平和な世の中なのに、ぼーっと生きていけない苦しさが身にしみる(笑)
漫画の原作だからか、ちょっと展開が急でわかりづらい部分はあったかな。
あのエピソードは結局どうなったの?とか、整合性が時々ハテナ。
私だけか?
エンディングで流れる、クラウドファンディングに出資した人たちのロールを見ていたら、
再び涙。
大企業がポンと出したのではない、都合のいいパトロンがいるのでもない、
市民が、作品を世に出すためにお金を出し合う。
私に、その懐はなかったな。
その小さなエールの集合体が、この愛ある作品。
こんなふうに作品が作られ、広まる時代なのだな。
こういう時代に、もう入ったのだ。
と、勇気付けられる、この映画をめぐる動きもまた、希望なのでした。
あ、地元の小さな古い単館映画館で、これを見たので、あの昭和感、ものすごくリアルでした。
リアルというのは、3Dとかサラウンドシステムのすごさとかを言うのではなく、
その作品の世界観とマッチする「場」で見るということなのかもしれません。