むしろこの国、壊してしまえばいいのに@シン・ゴジラ

映画シン・ゴジラを観る。
怪獣映画なんて…全く興味の範疇外だし、監督のエヴァンゲリオンは食わず嫌い(絵が嫌)

だから、絶対見るわけないと思っていたのですが、賛否両論のレビューが飛び交い、じゃあ行くかと。
この、口コミが人を呼ぶって、いいな。
私も毎度舞台の感想を書いているけれど、
舞台も、もっとブックレビューや映画レビューのように、客の賛否両論が飛び交ってもいいのになあと思う。

絶賛よりも、いろんな意見が飛び交うほうが、見に行く気になる。
まあ、映画も本も、完成してからお客の目にさらされるので、日々変わっていく演劇とはちょっと違うけれど。

脱線。

というわけで観ました。
ストーリーは書くまでもないか。

ゴジラ、かなり醜悪で恐ろしげに描かれているけど、「現実」のほうがよっぽど怖いなあと感じた。

震災の記憶がまだ生々しいからか、まるで再現、比喩のようなシーンの数々に
リアリティを感じられなかったな。

長い長い会議のシーンも、あれですら美化しすぎな気がするし。
政治家をダメダメに描いているけど、現実もっとダメダメだよ、ってつっこんじゃったし。

ゴジラが東京を破壊していくシーンに、恐怖や悲しみではなく、
「本当に粉々に壊れてしまえばいいのに、こんな東京、こんな国」とつい思ってしまった私。
福島に帰れない人がたくさんいるのに、未だに原発の再稼動を進めることに何の疑問も持たない人たちが、あらゆるものを消費しまくる東京。
沖縄、辺野古がほとんど武力で制圧されつつあるのに、何の痛みも感じない人たちが作るこの国。

せめて、フィクションの中でも、自分の住むところが壊され、放射能の濃度が上がっていくのを見るくらいじゃないと、
私たちには今福島や沖縄や、東京以外で起こっている事が想像力が及ばない。

フィクションじゃなく、本当に、潰してくれればいいのにあんな政府。
むしろゴジラがいればいいのに。

と、いつしかひたすら心の中で毒づきつづける私。性悪すぎるか…。

愛する故郷が破壊されることを命がけで救うヒーローの映画はいつの時代もあるけれど、
あれはその舞台を愛していればこその感動なわけで(笑)

私、東京を、日本を、愛してないんだなあと思わされました。

挙げ句の果てに動かなくなったゴジラに同情してた。
あいつ、何の感情も悪意もないのにって。

とにかく現代の空気は色濃く写している映画。
震災を経たからこそ生まれた作品。
かといって、思想や哲学はありそうでなさそうな、
なんというか、「愛」より「オタク」を感じる。

見終わって、感動でも不満でもなく、不思議な感じが残りました。

エンディングの伊福部さんのテーマ曲は初めてちゃんと聴いたけど、(ゴジラシリーズみたことない)すばらしかったな。