枠を超えてこそOpen heart@ピアノパラダイス

地元で開かれていた「ピアノパラダイス2016」という3日間に渡るイベント。
ピアニストわたなべよし美所有のオールドスタインウェイを会場に持ち込み、ピアノに限らず音楽にまつわるいろんな方をゲストに迎え、いくつものプログラムが繰り広げられる3日間。
テーマは「Open Your Heart」
そのうちの2つのプログラムを見たので、レポ。

2日目最終プログラム、ピアノの演奏に乗せて絵描きがその場で絵を描くライブペインティングを観る。

ピアノは、ジャジーなサウンドとボイパーや歌を組み合わせる永田ジョージさん。
絵は、あらゆる場所へあらゆるハートを描いている西村公一さん。

これは正直、絵と音、別々で味わいたかったかも。

だって、絵描きさんはそもそもハートしか描かない方で、中身はどうあれハートを描くと決まっているし(それは素晴らしい事だと思います!)
ピアノの方は、いわゆる即興ピアニストではなく、あくまでスタンダードやオリジナルの「楽曲」をやるし、やる曲も選んで来てるし、曲目解説までやるし拍手も受ける。
(そしてこれも、普通に見るなら何の問題もない)
でもその枠を、二人とも壊さないなかでの「コラボ」って?

もちろん音や空気が絵の色味やタッチに反映され、その絵を見て音楽に反映されているのは伝わるけれど、でも、二人とも「枠」は超えない。
ハートの枠も、楽曲の枠も、絵の枠も、音楽の枠も。
軽く事前打ち合わせをしたらしく、色やテーマはなんとなく決めていて、その通りになったと最後にMCで言われて、やっぱりな〜と。
見えている答えに向かっていった感じがしていたから。

この二人は、それぞれで観たら素敵だったと思う。
それをなぜブッキングしたのか、どうやってプロデュースしたのか、が見えなかった。
この二人がやるべきだった内容なのか?というのを置いといても、私なら打ち合わせなんてさせないな(笑)
その場の空気を掴み、空気を作り、空気を記録する、アーティストのその力を信じて、真っ白なまま、出会ってもらいたかったなあ。と思う。あのキャンバスみたいにね。
下書きなしで。

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そして、3日目最終日の主催者わたなべよし美ピアノソロ+ゲスト。

これは、ピアノオーナーでプロデューサーである彼女が自分の好きなように、弾いたり歌ったり、ゲストを呼んだりする、ゆるいサロンコンサート。

クラシックを弾いたり、オリジナルを歌ったり、若いアーティストたちに自分の歌の伴奏をさせてみたり、心のままに即興してみたり、盛りだくさん。
その中に、気楽に楽しくを装う彼女の心の繊細さ、不自由さをかいま見る。
特に歌からは、小さな抑圧された子どものささやきのような切実さを感じた。
観客へ届けるというよりは、自分で自分を確認するような、枠の内側へ向かう演奏。
あ、前日描かれたハートの絵と一緒だ。

そうか。Open your heartというこのイベントのテーマは、
彼女自身が自分に言い聞かせるようなテーマなのかも。
そして、あの絵は、それを無意識に投影していたのかも。
応援する気持ちにはなったけど、私自身は「Open heart」までには至れず。

だって、どんな舞台だって、観る人は、舞台へ自分を投影するのだもの。
舞台に立つ人がその瞬間、あらゆる枠を飛び出し自由に羽ばたいたとき、私たち観客も翼をもらうのだ。

他のプログラムは見られなかったけれど、全てのステージを経ての最後の彼女のピアノを聴いて、おそらく誰よりも開きたかった彼女は、どのくらい心を開けたのだろう。と想いを馳せました。

 

ちなみに、このイベントのもう一つのテーマ?はピアノの調律を432hzにする(通常は440~442hz)ということでしたが、
私にとっては、悪い印象も、良い印象もなかったです。
もちろん、音が変わるのは比べてくれたので分かりましたが、これで心身へ影響があるとかそういうことじゃなくて、音楽そのものがどうか、と、演奏者がどうかいうことに尽きるのでした。
それでも、弾き手のハートあぶり出した、という意味では、調律も関係あるのかなあ(笑)

ともあれ、途上にあるこのイベントが、本当の意味での地元の元気の発信地になるように、人々の心を自然と開かせるものであってほしいと、心から願ってやみません。