やわらかくて端正な文章

チョッちゃんが行くわよ (角川文庫)
黒柳 朝 / / 角川書店

私の記憶にある限り、初めて本を読んで泣いた、というのが「窓際のトットちゃん」で、これはその黒柳さんのお母さまの初エッセイ。
トットちゃんの口ぶりそっくりな文章は軽快でみずみずしくて、どんなに辛かった経験もさらりと、でも熱い思いを秘めて書いているのが伝わってきて、なんだかとてもやわらかい本だった。

この時代の人たちの文章の端正さがとても好きで、しかも文章を生業としていない人たちが、自分の積み重ねて来た人生を不器用に書き残しているものは、説明は時に分かりにくかったりもするけれど、その人そのものがまるごと見えてくる感じで、胸を打たれる。

こんなふうに素敵に年を重ねて、いつかそういう本を書けたらいいなあと思う。


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