わかりあえないということから

赤い長靴 (文春文庫 え 10-1)
江國 香織 / / 文藝春秋

公私共に心揺るがすことがてんこもりで、心が対応できないでいるなかでも、ゆっくりと空き時間に読んでいた、大好きな江國さんの本。
このひとは、「ひととひととはわかりあえない-特に男と女は-」という事だけを、ずっとずっと書き続けている気がする。
その絶望と、それを知った所からようやくスタートする希望。

今回も、淡々としていながら、本当に男と女はそれぞれ別の生き物だという残酷な真実を、すごくリアルに描いていて、怖かった。
一見甘い恋愛の先にある永遠に続く深い闇。
感情を表したり言葉で伝えあったりすることではもはや解決出来ない、根本的な悲しみ。

本能的で暴力的。美しい文章を編む江國さんの作品を、私はいつもそう感じる。

その暴力ぶりにいつも救われる。
今回も、何度学習しても忘れてしまう、わかりあえないというところから始まる長い道のりの面白さをたたきつけられて、参りました。まったくほんとにそうだよ。


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