人の生きざまはチャーミング

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)
川上 弘美 / / 新潮社


私が語りはじめた彼は (新潮文庫 み 34-5)
三浦 しをん / / 新潮社

なぜだか偶然にも同じような内容の本を手にとってしまった。
別にあらすじ見て買ったわけじゃないのに。
両方とも、女性にだらしない一人の男性をめぐる女性達や、周りの人たちから見た連作小説集。
連作って好き。見える景色がくるくる変わりながら、ひとつの物事や一人の人間像が浮かび上がってくる立体感が好きなのだろうな。

両方とも、よく出来た、悲しくておかしい作品。
男性であろうと女性であろうと、異性にだらしなかろうと誠実であろうと、一人の人間が別の誰かの人生を大きく動かしたり狂わせたりすることがある。
そのどうしようもない、善悪のつけようのない事実(架空の物語なのに、「事実」と書きたくなるすごさ!)と、そこに登場する人物それぞれのずるさもろさしたたかさは、見ていてけして不快ではなく、逆にちょっと勇気が湧いたりするから不思議だ。

若い頃なら、登場するふがいない男性たちに単純に怒れたかもしれないけれど、今はもはや同情してしまう。
二人ともちゃんと死ぬし。周りの女達は生き残るし。
そういう救いなのか救いじゃないのか分からない感じが、結構すき。

どんな人生も、それぞれになかなか面白いし、どろどろも含めて、人の生きざまはチャーミング。
最後にそんな事を感じさせてくれる2作であった。


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