しみじみ

センセイの鞄 (文春文庫)
川上 弘美 / / 文藝春秋

久々に、しみじみと好きだわあ、と思う本に出会った。
何にもすごいことがおこらない、静かな日々を描いた作品が好きです。
その裏側にずっとある得体の知れない悲しみや寂しさ、そういうものが直接的に出てこないで、あくまで軽く穏やかにみえるもの。
でもそれがスタイリッシュすぎたり、狙ってあるものは嫌で。

いやー好き。この人。
何気ない会話、エピソードにくすくす笑ってしまうし、登場する全ての人が邪悪さがなく、人間らしい愚かさにあふれているし、予想出来た通りのずるいラストにも泣いてしまうし。
作者の世界の見え方が、とても透明で静かなのがわかる。
物語の構築のしかたというより、言葉による世界の映し方が抜群なのだと思う。
その言葉!そのいい回し!そのテンポ!いちいち表現にやられっぱなし。

あんまりにセンシティブで女性的なので、そう感じるのはもしかしたら同世代女性だけかもしれないけど、いいじゃん対象限定、と思う。


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